- 建設CALSへの取り組み -
<建設実務(2001/1)「IT革命は何をもたらすのか」より:山根一男>
●今、何をしなければならないのか
IT投資の効果が顕著に現れるのは、組織分権などの改革や業務の見直しを同時に行っている場合であり、逆に、組織分権が遅れている場合には、ITに投資しても生産性が低下するという(宿南達志郎『eエコノミー入門』PHP新書)。
日本の企業では、情報化を推進しても効果が現れないという声を聞くことが多いが、旧来の組織やビジネス慣行を温存したまま、ハードウェアの導入に偏重していることも大きな理由と思われる。
特に、建設生産にはいろいろな変動要素が多くITを上手に使わないとかえって混乱することもある。ITを使う際に現場業務の流れにマッチしない使い方をすれば、「余計な作業ばかり増えて」という批判や、「やはり従来の方式でなければ」ということにもなりかねない。その意味でも、IT活用にあたっては、業務の見直しが不可欠である。
IT活用にはあわせて企業文化を変えなければいけないので、トップの断固たる姿勢が必須である。たとえば、部課長などが若い部下にパソコンの使い方をたびたび教えてもらうことには心理的な抵抗感が大きいし、従来のやり方を変える必要性について問題意識もないことが多い。
既存の組織の中心的存在である中高年令層は、ITに関して理解が十分ではなく既得権限へ固執することも多い。このような場合はIT推進への大きな障害となると思われる。そのためにも、部下任せでなくトップが先頭に立たなければ社内改革は進まない。
<中略>
ITの推進のためには一部ではなく建設産業全体で変わらなければ本当の効果は出ない。その際、特に地方中小のゼネコンや専門工事業者が問題になると思われる。本研究所の調査でも、積極的に情報化を進めているのは、地場トップクラスや意欲的な一部の企業に限られているようである。
近年、積算や原価計算をはじめとする各種ソフトが発売され、中小建設業においても普及はしているが、発注者からの要望で対応しているような状況が多い。
「受身的なOA化・情報化を進めている傾向が感じられる」という声も聞かれ、また、「きれいな書類を提出したい」という段階での利用にとどまっている業者も多いようである。
主たる発注者である地方自治体の情報化の遅れは、建設企業のこのような「顧客に合わせる」という特性とも関係して大きな課題である。建設産業だけでなく、公共サイドまでも含めた総合的な取組みが必要であろう。
建設産業のなかで、「ITによって何かメリットがあるのか」という消極的な話をよく聞く。しかし、ITに取り組む意欲と能力によって、今後、各企業の競争力に大きな格差が生じると思われる。
いわゆる『デジタル・デバイド』(情報格差)であるが、特に、人的、資金的に制約のある中小企業においては深刻な問題となりうる。そのような意味を込め、あえて厳しくいえば、利潤を上げる大きなチャンスとして、ITによるメリットは自ら探すべきものではなかろうか。
今、企業それぞれが『勝ち組』になれるかどうかが問われている。ITをいかに活用するかが勝負となる新しい時代が来ようとしている。
◆何も古い慣習や文化が全て悪いと言っているわけではないんです。そういったものが根付いたということにもそれなりの理由があるんでしょうから。
それを踏まえた上で、IT化をすすめていくことが中小企業のシステム担当者のポイントになるのだと思います。
山根氏が書いているように「顧客に合わせる」という体質は、そう簡単に払拭できるものではありません。ただ待っていても我々が成長していくことにはなりません。我々もITによるメリットを模索している最中なのです。<end>
●コア・コンピタンスであるノウハウのあり方が変わる
●建設経済研究所、取材で来社
●(財)建設経済研究所
Research
Institute Construction and Economy